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第189回 尊厳死を意思表示する方法




●189-1 日本における尊厳死と法律
 日本では、いまのところ尊厳死に関する法律はありません。実際の医療現場では、終末期の患者に対して、必ずしも本人が望まない延命治療が家族の同意等を得て行われることがあります。そのため、生前に延命治療を施さない尊厳死を意思表示する人が、徐々に増えています。

尊厳死に関する法律はありませんが、厚生労働省が2007年に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を策定・公表しています。ガイドラインでは終末期医療について、
「患者の意思決定を基本とすること」
「終末期医療は医療・ケアチームとして行うこと」
「治療方針は患者と医療従事者が十分話し合って患者が意思決定すること」
「患者と医療従事者の合意内容は文書にまとめておくこと」
「決定内容は家族にも知らせること」などがまとめられています。

●189-2 尊厳死宣言書の作成
 生前に尊厳死の意思表示を行うときは「尊厳死宣言書」を作成してください。尊厳死宣言書は、本人が家族、縁者、医療従事者に対して要望として宣言する形式となります。具体的には、次の文言を書き、意思表示としてください。

・私の傷病が、現在の医学では不治の状態であり、すでに死期が迫っていると診断された場合には、いたずらに死期を引き延ばすための延命処置は、一切お断りいたします。
・ただし、その場合、私の苦痛を和らげる処置(緩和ケア)は、最大限に実施してください。そのため、例えば麻薬などの副作用で亡くなる時期が早まったとしても、一向に構いません。
・私が数か月以上にわたって、いわゆる植物状態に陥った時は、一切の生命維持装置をとりやめてください。
・私が臓器提供の登録をしている場合には、臓器移植の準備が整うまでの延命処置については、必要かつできるだけ短い期間にしてください。

●189-3 尊厳死の条件
 実際に、尊厳死の意思表示に則った終末期医療の処置が行われるには、いくつかの条件があります。

第一に「患者が治癒不可能な病気に冒され、回復の見込みがなく死が避けられない末期状態にあること」、
第二に「治療行為の中止を求める患者の意思表示が存在し、それは治療行為の中止を行う時点で存在すること」、
第三に「どのような措置を何時どの時点で中止するかは、死期の切迫の程度、当該措置の中止による死期への影響の程度等を考慮して、医学的にもはや無意味であるとの適正さを判断し、自然の死を迎えさせるという目的に沿って決定されるべきである」ことなどです(東海大学安楽死事件判決文)。いずれにしても、尊厳死は、本人の意思表示が何より重要です。必ず尊厳死宣言書を作成しておくようにしてください。


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