葬儀相談コラム
第81回 戸籍の話 PART1
■81-1 戸籍とは?
自分の戸籍を目にしたことはありますか?
私たちは普段、戸籍を目にする機会は少ないですが、例えば、パスポートの申請や婚姻届の提出の際に見たことはありませんか。
戸籍が最も重要になるのは人が亡くなったとき。相続手続きに戸籍が必要となります。亡くなった人の、生まれてから亡くなるまでの親族の関係を確認し、遺産を相続する人を確定するために必要とされます。ということで、今回は戸籍についてのお話です。
「日本国民としての存在を証明する公的な文書」。これが戸籍です。私たちは、この世に生まれ、出生地、本籍地または届出人の所在地の市区町村役場の戸籍係に出生届が提出されて、はじめて戸籍に記載されます。出生届は、子の氏名(漢字、ふりがな)、生まれた年月日時分、性別、住所、父母との続柄(嫡出子か嫡出ではない子か)などを記載し、医師・助産婦による出生証明書を添付して出生後14日以内に提出します。
人が亡くなると、死亡届を提出します。死亡届書、死亡診断書(または死体検案書)、届出人の印鑑を揃えて手続きをすると、戸籍の上では「除籍」の扱いとなります。「除籍」と言っても戸籍から消されるわけではありません。戸籍上は名前の上に亡くなったことを示す「×」印が付けられるか、名前の横に「除籍」と印字されます。戸籍は父母、祖父母、兄弟、子、孫などの家族関係を「戸」の単位として証明する文書ですので、亡くなった人の記載も残り、親族関係を確認できる資料となるわけです。
人は生まれると父母の戸籍に「入籍」します。婚姻すると、父母の戸籍から「除籍」され、新しく夫婦の戸籍が作られて「入籍」します。また、戸籍は「本籍」(市区町村)単位で置かれますので、引っ越し等にともなって本籍地を変える手続きを行ったときも、そこで新たに戸籍が作られて「転籍」します。このように、戸籍は人生の節目ごとに「入籍」「転籍」「除籍」が繰り返されます。
■81-2 戸籍の入手
戸籍謄本(とうほん)、戸籍抄本(しょうほん)という言葉を聞いたことはありませんか?
戸籍の内容すべてをコピーしたものが戸籍謄本、内容の一部を抜粋してコピーしたものが戸籍抄本です。謄本は「全部事項証明書」、抄本は「個人事項証明書」とも呼ばれます。
戸籍謄本(抄本)は、本人または戸籍記載の家族が入手できます。他人の戸籍は正当な理由とそれを証明する書類がないと原則不可能です。なお、役所の窓口で申請して入手する方法と、郵送で取り寄せる方法の2つがあります。戸籍の交付手数料は戸籍謄本、戸籍抄本ともに450円かかります。郵送申請の場合は、請求書などの必要書類に交付手数料として郵便定額小為替証書と切手を貼った返信用封筒を添えて送ります。
■81-3 銀行預金と相続手続き
亡くなった人を口座名義人とする銀行預金口座があるときは、遺族が銀行に対し、預金口座の相続(または払戻し)の手続きを行う必要があります。遺言書がないケースでは、「遺産分割協議書」「亡くなった人の戸籍謄本(全部事項証明書)」「相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)」「相続人全員の印鑑証明書」を銀行に提出しなければ、お金を引き出すことができません。
注意したいのは、ここで提出する「亡くなった人の戸籍謄本(全部事項証明書)」は、出生から死亡まで連続した戸籍の謄本、となることです。
先に触れたように、戸籍は出生、結婚、離婚、死亡など人生で何度か移動を繰り返すのが一般的です。したがって、亡くなった人が除籍の扱いとなった最後の戸籍を見ただけでは、亡くなった人の相続人となる人すべてを確認・確定することができません。亡くなった時点の最後の戸籍を出発点に、戸籍を出生時点までさかのぼって見ることで、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでのすべての家族関係を確認する必要があるわけです。
例えば、結婚して夫婦で新しい戸籍を作り、夫婦の子供もその戸籍に入籍していたとします。その後、夫婦が離婚し別居したため、夫のみが別の住所地に本籍を移動して新しい戸籍に転籍しました。離婚の際、夫の転籍前の戸籍では妻と子は除籍されたことが記されていましたが、夫の転籍後の戸籍には妻と子の除籍の記載は引き継がれず、夫一人の記載となります。このように、亡くなった時点の戸籍の記載だけでは家族関係が確定しない、実際は離婚した配偶者との間に子がいたことが戸籍ではじめてわかった、というようなことがありえるわけです。
亡くなった人が生前に本籍地の移動や結婚・離婚を繰り返している場合などでは、戸籍をさかのぼる作業はたいへん面倒になります。現在の戸籍をてがかりに、一つ一つさかのぼり戸籍謄本を入手しなければなりません。普段はめったに見ることのない戸籍謄本。自分や家族にもしものときに備えて、過去の住所地についてエンディングノート等に書き残しておくと、遺族の戸籍入手の助けになることでしょう。
次回コラムでは、戸籍の見方について紹介します。
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