葬儀相談コラム


第77回 デジタル終活



デジタル終活  ■77-1 デジタル終活とは?

 誰もがスマホやパソコンを駆使するIT全盛時代の今日、Eメールやツイッター、Facebook、LINE、Google+など、さまざまなサービスにアカウント(ネットワークを通じてコンピュータを利用する権利)を持つ人が増えています。高齢者にもSNSサービスの利用が広がっています。
 ところで、インターネットサービスを使う際に設定するIDやパスワードの管理に悩んでいる人は、高齢者に限らず多いのではないでしょうか。自分に万一のとき、誰にもIDやパスワードを教えていなかったとしたら、インターネットサービスは自分の死後も生き続けてしまいます。そこでいま、高齢者の間でも注目され始めているのが、デジタル終活です。
 デジタル終活とは、自分の死後にインターネット上を含むパソコン内の資産をどう扱うかについて生前に整理をしておくことをいいます。ID・パスワード以外にも、ワードやエクセル、PDFなどの書類やデジタル画像もその対象です。各種データにはどのようにアクセスできるか、どのデータを残しどのデータを削除するか、閲覧者の範囲はなど、細かく決めて整理をしておかないと、残されたデータがもとになって問題が起きないとも限りません。十分な対策が必要です。





■77-2 残す対策、消す対策

 対策には、「残す」対策と「消す」対策があります。
まず、パソコンなどのデジタル機器や各種インターネットサービスに登録しているIDやパスワードについては、エンディングノートなどの記録簿に書き残しておくことが大切です。これで、自分の死後も家族は各種データにアクセスできるようになります。
 次に、「消す」対策ですが、「僕が死んだら…」というソフトを利用すると、あらかじめ指定しておいた誰にも見られたくないファイルを、パソコンのハードディスク上から完全削除してくれます。本人以外の人がパソコンの操作を開始すると、指定されたファイルを削除するプログラムが自動的に動き出す仕組みです。
 Googleを利用している人は「グーグルアカウント無効化管理ツール」が便利です。アカウントの使用をやめた場合に、写真やメール、ドキュメントなどの管理をあらかじめ設定できます。アカウントが長期間使用されないと、アカウント自体を削除してくれます。
 一方、「残す」対策としては「PassMyWill」というソフトがあります。これは家族に教えたいIDやパスワードを生前に指定しておくと、本人の死後に家族に自動的に情報を渡すサービスです。




■77-3 ネット銀行の口座はどうなる?

 デジタル終活では、ネット銀行に残された預金についても注意を払っておきましょう。ネット銀行とは紙の預金通帳や入出金明細書を発行しないインターネット専用の銀行で、店舗やATM、行員などのコストが少ない分、預金金利や各種手数料が一般の銀行に比べて有利な点が特徴です。
 ネット銀行は無通帳取引で、インターネット上でログインID、ログインパスワード、暗証番号を使って利用するため、それらを本人以外の人に知らせておかないと、本人に万一のとき、存在を確認することができません。また、本人(口座名義人)が亡くなったときは、家族がすみやかにネット銀行に連絡し、死亡届を提出しなければなりません。その時点で、一般の銀行口座と同様に口座は凍結され、原則としてお金を引き出せなくなります。
 デジタル終活は、これからの課題であり、今後さまざまなサービスが生まれてくる分野でもあります。日頃から、デジタル資産を整理しておき、重要な情報はできるだけ記録にとどめておくようにしておきましょう。




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