葬儀相談コラム
第67回 遺品整理と形見分け
■67-1 遺品整理
故人の部屋の清掃・片づけを行って、不要品を処分したり形見分け(後述)の品物を整理することを「遺品整理」といいます。これまで遺品整理は、遺族が故人を偲びながら行うものでしたが、最近は遺品整理業者に依頼することも多くなってきました。核家族化が進むなか、家族が別々の家に住むことが多くなっていることや独居老人が増えていることなども遺品整理を業者に依頼する機会が増えている理由と考えられます。
遺品整理業は比較的新しい業種で、葬儀関連業者のほか運送業やリサイクル業、リフォーム業などを営んでいた業者が副業として営むケースが増えています。
遺品整理業者に依頼をすると、まず、故人の部屋の状況に応じて見積もりが行われます。遺品整理の料金は、遺品の総量、作業時間・日数、作業人数、クリーンアップの程度、廃品回収等トラックの準備など、諸費用を合計して10万円〜50万円というところです。遺品の分別、ダンボール等で梱包、エアコン・風呂桶・照明器具・カーテン・釘・ネジ等の取外し、搬出、部屋・ベランダ等の掃除などが行われます。
ケースによっては、孤独死や自殺、事故などで亡くなった方の遺品整理も行われます。こうした場合は特殊清掃といって、血痕・体液跡などを含む汚れの清掃や悪臭の消臭が行われます。喫煙臭やペット臭などの消臭も特殊清掃で行われます。
また、遺品を整理していると、保険証券、株券、預金通帳、印鑑、カード、現金などが出てくることがあります。これらについては、貴重品ボックスを用意して保管してくれる遺品整理業者もあります。
■67-2 遺品整理業者とのトラブルに注意!
遺品整理を業者に依頼することが増えている一方で、遺品整理業者とのトラブルも起きており注意が必要です。
遺品整理業者とのトラブルで多いのが、不当に安い価格での遺品の買い取りです。中古市場よりも著しく低い価格で遺品の買い取りを強要されるといったトラブルが増えています。遺品整理業者の収益源には、遺品整理サービスのほかに遺品の処分・売却による利益があります。できるだけ安い価格で遺品を引き取って、利幅を大きくして売却しようとするわけです。
遺品整理サービスの料金が不当に高額なケースもあります。相場では10万円〜50万円程度のはずが数百万円の高額請求を受け、契約を拒絶すると「キャンセルはきかない」と脅されたり、見積もり料やキャンセル料を請求されるケースが報告されています。
サービス自体は適切でも、基本料金とオプション料金が分かれていて、実際に遺品整理が行われた後でオプション料金が加算され、結果的に高額な請求を受けてしまうといった例もあります。
また、依頼者が立ち会わない場所の遺品整理で、依頼者に承諾を取らないまま何度も出入りしたり、遺品整理中に見つけた貴重品が無くなったりするケースもあります。
このようなトラブルに遭わないためには、複数の遺品整理業者に相談すること、事前の見積もりの段階で慎重に検討すること、トラブルに遭いそうになったら国民生活センターなどの消費者相談窓口にすぐに連絡をとることが肝心です。
最近は「遺品整理士」という名称で活動するなど、業界内で資格を作って法令等遵守を始めている業者もいます。遺品整理を業者に依頼する際は、遺品整理士の資格を持っているかどうかも、判断基準の一つとなるでしょう。
■67-3 形見分け
形見分けとはなにか、ご存知でしょうか。故人が生前に愛用していたものや思い出のものなどを、親族や親交の深かった友人などに分けて贈ることをいいます。形見分けはたんに故人の遺品を贈り贈られるだけではありません。遺品を通じて故人の遺徳を偲び、故人の生前の善行や浄行を学んでいくという、仏教で言い伝えられてきた教えにほかなりません。
形見分けは本来、死者の霊が宿ると考えられていた衣類だけを近親者に贈るのが習わしでした。しかし最近は、腕時計や万年筆など、なんでも贈るようになりました。形見分けを贈るタイミングに決まりはありませんが、四十九日忌や百カ日忌の法要のときが一般的なようです。
形見分けの贈り方にも厳密な決まりがあるわけではありませんが、「目上の人には贈らない」「包装せずにそのまま贈る」「高価なものは贈らない」ことが多いようです。
形見分けではありませんが、価値のある蔵書などを地域の学校や図書館に寄贈したり、美術品や骨董品を美術館などに寄贈することも、とても意義深いものです。故人が遺してくれた品物を、いつまでも大切に引き継いでいくことは、個人に対する何よりの弔いになることでしょう。
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