葬儀相談コラム
第47回 地域で見る葬儀のしきたりと風習 その2
■47-1 大阪府の葬儀のしきたりと風習
香典袋の水引が黄色と白。香典袋といえば、黒と白の水引が一般的ですが、大阪では黄色と白の水引を使います。大阪では、友引の日に葬儀を出す場合、「いちま人形」と呼ばれる人形を棺に入ます。この「いちま人形」が人間の身代わりとして故人のお供をすると考えることで友引の日でも不安なくお葬式を出すことができます。関西圏では一般的に関東圏より小さな骨つぼが使われます。大阪府では一寸ほどの小さな骨つぼを「本骨」、それより少し大きい骨つぼを「胴骨」として、一方を菩提寺などに納めることが多いようです。
■47-2 兵庫県の葬儀のしきたりと風習
お葬式で、故人に供える花のことを「供花」と言い、全国的には、菊などの生花が使われるのが一般的です。しかし、兵庫県ではこの供花に樒だけを用います。樒は「香花」とも呼ばれる香りの強い常緑樹で、故人に悪霊が寄ってこないための魔除けの意味もあるようです。また全国的に増えている「即返し」をすることは少なく、四十九日が明けた後に香典の額に応じた「半返し」を行います。
■47-3 奈良県の葬儀のしきたりと風習
関西圏では、香典袋に黄色と白の水引を使う地域が多くありますが、奈良県では全国的に使われている黒白の水引を用意します。関東圏では通夜の参列者に軽食や酒を出す「通夜振舞い」がありますが、奈良県では親族のみに握りずしやオードブルを振る舞うことが多いようです。また、会葬御礼として、茶や砂糖、クッキーなどの詰め合わせを用意します。
■47-4 滋賀県の葬儀のしきたりと風習
滋賀県では、香典返しに供養品のほかに、「粗飯料」として2,000円ほどの新札をつける風習のある地域があります。近年滋賀県内でも香典を辞退する人が半数を超えるようになりました。香典辞退では、基本的には香典返しは必要ありませんが、会葬御礼のあいさつ状に添えて600〜800円程度のタオルやハンカチを用意することもあるようです。
■47-5 和歌山県の葬儀のしきたりと風習
通夜の焼香客を軽い食事や酒でもてなす「通夜振舞い」は、関東圏では一般の参列者にも行いますが、和歌山県ではあまり行われていません。通夜の後は、親族や遺族のみで弁当などを食べる程度です。また、香典返しを葬儀当日に渡す「即返し」が全国的に主流ですが、和歌山県では四十九日の法要後に渡す人が多いようです。
■47-6 岡山県の葬儀のしきたりと風習
葬儀・告別式が終わった後に出される「精進落とし」の食事には、地域によってさまざまな特色や呼び名があります。岡山県では、出棺前に出される精進落としの食事のことを「立飯」と呼びます。葬儀にまつわる風習が多く伝わる岡山県ですが、ここ数年でそれらのしきたりは急激に失われつつあるようです。一方で、小規模な「家族葬」を希望する人が多くなり、病院から火葬場へ直行する「直葬」などを選択する人も増えています。高齢の方が長期入院で亡くなった場合などはあえて近隣などには知らせずに葬儀をすませることもあるようです。
■47-7 広島県の葬儀のしきたりと風習
浄土真宗の多い安芸地方。広島県の安芸地方には浄土真宗の熱心な檀家が多く、厳島では住民の8割が浄土真宗だと言われています。全国的にみられる葬儀や火葬場から戻った際に塩をかけてお清めをするならわしも、安芸地方ではあまりみられません。広島市内では、火葬中に親族で精進料理などを食べる習慣があります。葬儀後のお斎(おとき・墓参後、僧侶や会葬者に食事をふるまうこと)などはあまり行われないようです。広島県では香典の中身をその場で確認します。そうした習慣のない地域からきた人にとっては驚く光景ですが、広島県ではごく一般的なことですので知っておくとよいでしょう。
■47-8 山口県の葬儀のしきたりと風習
山口県では、霊柩車までのわずかな距離でも葬列を組んで移動する場合があり、極端に簡略化してはいるものの、野辺送りの名残とみられます。関東圏に多い通夜の焼香客に軽食や酒を出す「通夜振舞い」の習慣はなく、あったとしても親族や遺族が簡単な食事をする程度です。昨今は葬儀・告別式に香典返しをする「即返し」の地域が増えていますが、山口県では四十九日に商品券やギフト品を贈ることが多いようです。
■47-9 鳥取県の葬儀のしきたりと風習
葬儀の前に火葬を行う「前火葬」と、葬儀後に火葬を行う「後火葬」が混在していますが、市内ではほとんどが後火葬です。山間部では、近隣の人が集まり、葬列に使う「腰折れ提灯」や「天蓋」、紙ふぶきを入れたこもなどを手作りする風習が今なお残っています。
■47-10 島根県の葬儀のしきたりと風習
島根県の松江市では、葬儀は寺院で行われますが、その他の地域では、通夜や葬儀を自宅で行う場合が少なくありません。島根県では、通夜のことを「夜伽」と呼び、自宅で行われる場合、時間は決まっていません。弔問客は各々任意の時間に喪家に赴いて焼香しますから、「夜伽」は一晩中に状態になるようです。島根県には、「前火葬」と「後火葬」が混在し、松江市、出雲市などでは、午前中に火葬を行い、午後から葬儀を行うのが一般的です。竹を立てて忌中のしるしにする。死者を出した家が入口に「忌中」と書いた張り紙をする風習は全国に広く見られますが、島根県の松江市など一部地域では、忌中のしるしとして門の両側に2本の竹を立てます。浄土真宗の熱心な信徒が多い西部地域では、葬儀でも本を見ずに読経できる人が多く、慣れない参列者は驚くかもしれません。
■47-11 徳島県の葬儀のしきたりと風習は
徳島県では、近親者が通夜に訪れる際、香典とは別に「通夜見舞い」としてお菓子や酒を持参するしきたりがあります。通夜の後には、親しい人を中心とした弔問客に食事などを振る舞う「通夜振舞い」のならわしがありますが、徳島県ではこの通夜振舞いに「きつねうどん」を出すことが定番となっています。火葬場から戻ってお清めの塩を使う際には、竹で作った小さな馬をまたいでから家に入るしきたりもあります。
■47-12 高知県の葬儀のしきたりと風習
高知県では、神仏習合の名残で、仏式と神式の葬儀の風習が混じっていたり、普段は仏式でお参りをして葬儀は神式で行われるということが珍しくありません。地域によっては納棺されるまでの間、故人を布団に寝かせてまるで生きているかのように話しかけたり、食事を運んだりする風習があります。自宅葬が少なくなり式場での葬儀が増えるにつれ、こうした風習も徐々になくなりつつあるようです。
■47-13 愛媛県の葬儀のしきたりと風習
出棺の際に近親者が柩をかついで回す「柩回し」「三度回し」や、枕飯をにぎったものを故人に持たせるなど、葬儀に関する豊かな風習が伝わる愛媛県ですが、都市部を中心に式場による葬儀が増えこうした光景もあまり見られなくなりました。通夜の焼香客に軽食や酒を振る舞う「通夜振舞い」は関東圏では一般の参列者にも行いますが、愛媛県では近親者のみに出されることが多いようです。香典返しはカタログギフトが多く、いただいた額の半分から三分の一程度の金額のものをカタログなどから選びます。
■47-14 香川県の葬儀のしきたりと風習
故人を布団に寝かせて通夜を行う香川県は、弘法大師の生誕地として多くの寺院があります。高松市では、寺院で通夜が行われ葬儀に複数の僧侶が列席します。地方では通夜を自宅で行い、寺院で葬儀を行うことが多いようです。「末期の水」の儀式では、一般的に使われている綿ではなく、魔除けの力があるとされている樒を用います。高松市などは友引の日は火葬場が休みとなり、葬儀も行われませんが、西部の地域では友引の日でも火葬ができます。その際、身代わりとなる人形を入れることがあります。出棺の際に茶わんを割る風習は、宗旨・宗派によって最近は行われないことも多いですが、香川県では行う人が多いようです。
■47-15 福岡県の葬儀のしきたりと風習
通夜の後、親族や近親者などを中心とした参列者に食べ物や飲み物を振る舞う「通夜振舞い」の風習は、東日本を中心に全国各地で見られます。福岡県ではこの「通夜振舞い」に招かれた場合、「通夜見舞い」と呼ばれるお菓子や酒などを持参するのが一般的です。また、葬儀の前に火葬する「前火葬」と葬儀の後で火葬する「後火葬」が混在しています。東南部では「前火葬」が多いようです。博多では、火葬場へ行く霊柩車は、櫛田神社の前を避けて通るのが通例です。全国的には、通夜や葬儀の際僧侶が読経をしている間に弔問客がお焼香するのが一般的ですが、福岡では通夜の読経中には焼香をしない宗派もあるようです。福岡市や糸島市では、葬儀の前に遺族や親族が故人との最後の食事として「お斎」を振る舞います。
■47-16 大分県の葬儀のしきたりと風習
通夜の後、親近者を中心に飲食をしながら個人を偲んで語り合う席やその時に食べる食事のことを、「通夜振舞い」といい、全国にはさまざまなかたちの通夜振舞いがあります。大分県では、出棺の際、棺をぐるぐる3回回す「棺回し」や、故人の茶碗を割る「茶碗割り」が行われます。棺を回すのは故人の方向感覚を失くして、戻ってこられなくするためで、茶碗を割るのは、故人に戻ってきてもご飯が食べられないことを悟らせるためだと言われ、どちらも、故人に迷わず成仏してほしいという願いが込められています。また、出棺の際、参列者に団子を配るというしきたりもあるようです。納棺の際、由布市では「ハゼ」と呼ばれる籾を炒ったものを棺に入れます。県南部では、家族が煮しめなどをつくって参列者とともに酒をのみ、遺体に吹きかける習わしもあります。
■47-17 長崎県の葬儀のしきたりと風習
島原市、布津町、有家町、西有家町、北有家町などでは、葬儀・告別式の前に火葬する「前火葬」が一般的です。そのほかの地域では寺によっても異なりますが、葬儀・告別式後に火葬する「後火葬」を行っています。20年ほど前までは、一部の地域で出棺の際に近親者が白い三角の布を額に巻く風習がありました。雲仙市などでは、出棺の際に茶わんを割るしきたりなどもあります。長崎では通夜は大変質素です。また、通夜そのものも静かに質素に行われ、一部には通夜を行わない地域もあるようです。出棺の際、出口から霊柩車までの短い間だけでも遺族や親近者などが葬列を組むという「野辺送り」の名残が残るしきたりもあります。
■47-18 佐賀県の葬儀のしきたりと風習
最近ではほとんど見られませんが、一部の地域では、出棺時に柩を時計と反対回りに3度回す「三度回し」「柩回し」と呼ばれるしきたりが今なお残っています。宗派にもよりますが、故人の愛用していた茶わんを割るところもあります。通夜の焼香客に軽食や酒を振る舞う「通夜振舞い」の風習はほとんどなく、遺族や親族が精進料理の弁当や鉢盛りの総菜などを食べて過ごします。また、葬儀や火葬は午前中が多く、午後に亡くなった場合は納棺をせずに仮通夜をして24時間後に納棺をして本通夜をするならわしです。
■47-19 熊本県の葬儀のしきたりと風習
大分県では、出棺の際、棺をぐるぐる3回回す「棺回し」や、故人の茶碗を割る「茶碗割り」が行われます。棺を回すのは故人の方向感覚を失くして、戻ってこられなくするためで、茶碗を割るのは、故人に戻ってきてもご飯が食べられないことを悟らせるためだと言われ、どちらも故人に迷わず成仏してほしいという願いが込められています。また、出棺の際、参列者に団子を配るというしきたりもあるようです。納棺の際、由布市では「ハゼ」と呼ばれる籾を炒ったものを棺に入れます。県南部では、家族が煮しめなどをつくって参列者とともに酒をのみ、遺体に吹きかける習わしもあります。
■47-20 宮崎県の葬儀のしきたりと風習
宮崎県では、多くの人が通夜と葬儀・告別式の両方に参列します。仕事などで告別式に参列できないときは、通夜に香典を持っていきます。関東圏などでは会葬御礼に塩の小袋がついており、帰宅時にお浄めを行うことがありますが、宮崎県では会葬礼状にお浄めの塩をつけない家が多いようです。故人の茶わんを割る風習は多くの地域で見られます。宮崎県でもかつては道路に投げて割ったり、和紙に包んで割るなど、さまざまな形でこの風習が生きていたようですが、最近では行わない家が増えているようです。また、帰宅後に玄関で塩をかける「お浄め」の行為も行われなくなってきています。
■47-21 鹿児島県の葬儀のしきたりと風習
鹿児島県北部の一部地域では、「別れ飯」を、通夜の参列者にも振る舞います。時代の変化で葬儀の事情が変わり、火葬場で食事をとることが増えた最近では、「別れ飯」を省略する場合も多いようです。また、県南地方では、「別れの杯」として、棺に納める故人の遺体に焼酎を少しふりかけることもあるといいます。鹿児島県には、通夜の焼香客を「通夜振舞い」でもてなす習慣があります。通夜振る舞いでは、殺生を避ける意味で生ものは出さず、野菜の煮つけや塩むすび厚揚げを肉に見立てたものなどが出されますが、県外の参列者が多いときなどは葬家の要望でにぎり寿司や地鶏の刺身が並ぶこともあるようです。
■47-22 沖縄県の葬儀のしきたりと風習
沖縄県では、一般の人が亡くなった際にも新聞に「訃報広告」を出します。記される内容はかなり詳細です。故人の名前や喪主の名前、葬儀の日時の他、同居の家族名や、独立した子供や孫、さらには、子や孫の配偶者の名前まで列挙されます。沖縄県では遺体の枕飾りに豚の三枚肉を供える風習があります。一般的には殺生を控える意味で生ものを供えることは少ないため、この風習は沖縄県の特徴ともいえます。そのほか、みそ汁や塩、みそ、饅頭などが供えられます。沖縄県では、「亀甲墓(きっこうばか)」や、「破風墓(はふうばか)」といった独特な形状で、家のように大きなお墓が建てられます。これは、かつて土葬をしていた時代に、墓の中で遺体を白骨化させる「風葬」を行っていたことが影響しています。また、沖縄県のお墓が、村単位、一族単位の共同墓であることも大きな理由でしょう。ちなみに、沖縄県には檀家制度がないため、宗旨・宗派を問わず読経を依頼できます。
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