葬儀相談コラム


第46回 地域で見る葬儀のしきたりと風習 その1



葬儀のしきたり ■46-1 北海道の葬儀のしきたりと風習

 北海道においては、通夜振舞いは親族のみで行うことが通例です。また、花祭壇が主流のようです。本州で行っている白木の祭壇の感覚とは多少異なっているようです。通夜や葬儀の時に香典の領収書を発行する事です。香典返しもなく、会葬お礼には、海苔・お茶など300円〜1,000円程度の粗品や、QUOカード・図書カードなどの金券が用いられる事が多いようです。こうした葬儀の特徴は、合理的で「お互い様」の精神を持つと言われる道民性の表れかもしれません。北海道では、亡くなると新聞に訃報が載ります。そのため、道民の半分近くが読んでいる地元紙、北海道新聞には、一般人の訃報広告専用ページが設けられているほどです。




■46-2 青森県の葬儀のしきたりと風習

 青森県では、宗教や宗派に関わらず、通夜の前に遺体を火葬する「前火葬」が一般的です。青森県全域では一般の焼香客は通夜に多く参列しますが、八戸市だけは通夜は近親者のみで行い、告別式に多くの参列者が集まる傾向があります。八戸市では、一般の人でも地元紙のお悔やみ欄に死亡広告を出すことが多いため、そういうことが関連しているかもしれません。骨壺には入れないで納骨する日本の多くの地域では、火葬場でお骨上げされた骨は、骨箱や骨壺に納められてそのまま納骨されます。しかし、青森では一度骨箱に入れた骨を、馬簾や死花を飾ったお墓の前で再び入れ物から出し、骨のままの状態にして納骨します。見方を変えれば「人は死んだら土に還る」という太古からの考えに即した自然なやり方なのかもしれません。




■46-3 岩手県の葬儀のしきたりと風習

 岩手県では、逝去から葬儀式の間に3日―5日の期間をとりますが、これも、その間に人が集まれるようにとの配慮から始まった風習と思われます。通夜の開式時間は特に定めず、弔問客が夜半まで訪れることもあります。内陸部では、臨終から葬儀まで数日空け、その間に複数回通夜が営まれます。また、一般的な通夜の後、再び通夜を営む地域もあります。葬儀会場には参列者から先に入ります。火葬の後に葬儀を行う「骨葬」が一般的です。




■46-4 秋田県の葬儀のしきたりと風習

 秋田県では全般的に通夜をせず、葬儀当日の午前中に火葬、午後に葬儀・告別式が行われる「一日葬」が主流です。本庄地区では、葬儀前日に火葬を行い、親族のみ通夜の代わりに「御逮夜(おたいや)」として精進料理などを食べることもあります。また、近年は式場での葬儀が増えましたが、まだまだ自宅葬や寺での葬儀も多く、北秋田市内では、葬列を組んで墓地に向かう姿も見られます。お葬式には、「出棺」、「火葬」、「通夜」、「葬儀」という順で行うやり方と、「通夜」、「出棺」、「火葬」、「葬儀」の順に行うやり方が混在しています。どちらの場合も、火葬が行われるのは葬儀の前です。




■46-5 宮城県の葬儀のしきたりと風習

 最近は少なくなりましたが、「通夜振舞い」に小豆の一種を混ぜてもち米を炊いたおこわを出す家もあるようです。通夜振舞いはもともと、故人の前にご馳走を出して再生を願う意味がありましたが、現在では、故人の近親者が集まって思い出などを語りながら、故人を偲び、追悼する際の食事となっています。都市部では地域住民の絆がどんどん稀薄になり、近隣組織がお葬式を取り仕切るようなことはほとんどなくなっています。通夜振る舞いに対して「お悔やみ」として、1,000〜2,000円程度を香典と別に包む地域もあるようです。




■46-6 山形県の葬儀のしきたりと風習

 葬儀の前に火葬を行う「前火葬」の地域が多く、午前中に火葬、午後に葬儀・告別式が行われます。葬儀当日に初七日法要まで行ってしまう地域は多いですが、山形県では三十五日(五七日)法要を行うことが多いようです。また、地域によっては、お葬式を出す日として、「友引」以外にも避けている暦があります。鶴岡地方では、子(ね)と丑(うし)のお葬式を避け、酒田地方では、葬儀が寅(とら)にかかるのを避けます。山形のお葬式では、通夜の翌朝、葬儀に先だって火葬されるのが一般的です。出棺は玄関以外の場所から行われ、火葬場から帰って塩と水で清め、遺骨を祭壇に安置して葬儀を行います。




■46-7 福島県の葬儀のしきたりと風習

 福島県では、多くの地域で葬儀の前に火葬をする「前火葬」が行われています。前火葬では、午前中に火葬、午後に葬儀・告別式が行われ、初七日法要となります。法要の後は精進落としがありますが、親族中心に席を設ける場合は葬儀後に休憩をはさんで法要・食事、知人や友人まで参列する場合は、法要後にすぐに食事となることが多いようです。出棺する門は、あの世への入り口と考えられるため、人が通常出入りしている玄関を避け、別の場所から棺を出す地域は少なくありません。福島県でも、一部の地域では、出棺の際に玄関の脇に仮門を作り、棺はこの仮門をくぐらせます。




■46-8 茨城県の葬儀のしきたりと風習

 茨城県の南部では、出棺の際、遺族が参列者に向かって小銭を投げることがあります。茨城県の葬儀では、通夜振舞いに寿司やオードブルではなく、餅やおこわと酒が出されるのが一般的です。また、葬儀を終えたら、当日すぐに埋葬を済ませることも多くあります。お葬式に参列した人は、帰宅した際、お清めの塩をかけるという風習が広く全国的に見られますが、茨城県の水戸市などでは、お清めとして鰹節を少し食べます。通夜返しはかつてはあんパンや饅頭を配っていましたが、現在は500円程度のハンカチなどを用意することが多いようです。




■46-9 栃木県の葬儀のしきたりと風習

 栃木県では、「組内」と呼ばれる葬儀などで助け合う組織がありますが、しかし、式場で葬儀を行うことが増えた昨今は、大部分を葬儀社に任せることが主流となり、組内の役割は受け付けや会計などの手伝いにとどまっているようです。栃木の日光では、お葬式に出た参列者が帰宅して家に入るとき、お清めの塩と一緒に鰹節をかけるという変わった風習が残っています。那須町などで納骨をした喪家は、初七日まで毎朝「墓おこし」と呼ばれる墓参りを行います。




■46-10 東京都の葬儀のしきたりと風習

 火葬場は、自治体が運営していることが一般的ですが、東京都では事情が違います。東京都23区内に9つある火葬施設のうち、公営は2か所のみで他の7か所は民間企業の運営です。東京では火葬施設が不足しているため、逝去の数日後まで火葬場の予約が取れないということも珍しくありません。また、人気のある公営施設や火葬場併設の民営斎場では、1週間先まで予約が取れないこともあり、こうした施設を利用する場合、通夜が逝去の1週間後になるという例もあります。故人は、お葬式までの間自宅で安置されるのが通常ですが、通夜までに長く時間が空く場合は火葬場に併設されている冷蔵保管庫や葬儀社に、葬儀当日まで故人を安置することが多くなっています。東京都心部では、葬儀よりも通夜の方により多くの人が参加します。通夜では、焼香に訪れた一般参列者が焼香後別室に案内されて、寿司やオードブル、酒などの通夜料理がふるまわれます。これは、「通夜振舞い」と呼ばれ、一口でも箸をつけることが供養になるとされています。




■46-11 神奈川県の葬儀のしきたり風習

 都市部と郊外で大きく違うお葬式事情があるようです。人口の多い都市部では火葬場が不足しており、東京都同様民営の火葬場があります。人気の高い公営施設では、1週間先まで火葬の予約で埋まっていることもよくあり、そうした施設で葬儀する場合、通夜が逝去の1週間後ということも珍しくありません。また、葬儀のスタイルに親族や親しい知人のみで葬儀を行う「家族葬」を選ぶ人も増えています。これに対し、郊外の農村部では昔ながらのしきたりや風習が残っており、「隣組」など近隣組織の援助を得て、通夜・葬儀とも自宅で行われる場合が多くあります。都市部では斎場を利用する人が多いお葬式ですが、相模原市では、自宅葬が8割に上ります。




■46-12 埼玉県の葬儀のしきたりと風習

 都市部と、郡部や農村部で葬儀のやり方が違うようです。埼玉県は、浦和市や大宮市などの都市部では葬儀が斎場で行われるようになりましたが、郡部や農村部の葬儀には今も古いしきたりが見られます。出棺の際に故人が生前利用していた茶碗を割る「茶碗割り」もそんなしきたりのひとつです。また、葬儀の後に火葬する「後火葬」の地域と通夜の翌朝に火葬を済ませ、骨葬を行う「前火葬」の地域が混在しています。お葬式のとき、近親者や親しい弔問客が酒を口に含んで故人の遺体に吹きかけすこともあります。これは昔、遺体の殺菌や消臭のために行われていたことが、現代でも風習として残ったものです。




■46-13 千葉県の葬儀のしきたりと風習

 基本的に、葬儀・告別式の後に火葬を行う「後火葬」が多いですが、海沿いの九十九里町周辺では通夜の翌朝に火葬する「前火葬」を行います。千葉市では葬儀後、銚子市では通夜の前と火葬の行われるタイミングが異なります。銚子市では、香典を通夜と葬儀の両方で出すのが一般的です。都市部では合理化された葬儀が行われますが、農村部や房総地域などには古い風習が残っており、「葬式組」と呼ばれる近隣住民組織が寺院との連絡やお葬式の準備を手伝います。松戸市千駄堀地域では、親族が告別式での焼香の前に「別れの杯」としてお酒を回し飲みするしきたりがあります。また、故人の傍で一晩中寝ないで過ごす「夜伽」と呼ばれるお通夜を行う地域もあります。皆が夜通し起きている夜伽では飲食を伴うため、「夜伽見舞い」と呼ばれる食べ物を持ち寄るならわしもあるようです。




■46-14 群馬県の葬儀のしきたりと風習

 群馬県では、戦後の昭和20〜30年代に「新生活運動」と呼ばれる市民運動が盛んになりました。「新生活運動」には経済的に疲弊した時代を背景に、華美な生活を慎み、経費削減に努めるという意味合いがあります。葬儀においても香典の金額を減らし香典返しを辞退することを推奨しており、現在もその活動が盛んな地域が多く存在します。通夜や葬儀においては「一般」と「新生活」の2つの受け付けを設けることがほとんどで、「新生活」で受け付けをした方には基本的に香典返しは行いません。




■46-15 山梨県の葬儀のしきたりと風習

 山梨県では、法要の後、親族を中心に5,000円程度の食事を振る舞う「初七日御膳」を行う地域があります。告別式の前に火葬する「前火葬」が多く、午前中に火葬、午後から告別式を行い、その後食事という流れです。葬式などで助け合う隣組のつながりが強く、葬儀を手伝った組の人もこうした席に着くのが慣例となっています。通夜の参列者に軽い食事や酒を出す「通夜振舞い」の習慣はありません。




■46-16 新潟県の葬儀のしきたりと風習

 柏崎など新潟県の一部地域では、通夜の際、香典だけでなく紅白の水引をかけた「お見舞い」を出すことがあります。これには入院中お見舞いに行けなかったことを詫びる気持ちが込められているといいます。新潟市内では告別式より通夜の参列者が多く、その為焼香客に軽い食事や酒を出す「通夜振舞い」ではしっかりした食事を用意するようです。五泉市では通夜の日に51個のもちを供え、佐渡市全域では「出場のむすび」というおにぎりと煮しめのセットを出すなどさまざまな風習があります。




■46-17 福井県の葬儀のしきたりと風習

 地域のつながりが深く、通夜や葬儀・告別式の弔問客が多かった頃の名残として「廻り焼香」の風習があります。廻り焼香は、通夜や葬儀・告別式の開式前から参列し焼香を終えた人から帰るもので、多くの弔問客が滞りなく焼香を済ませるための知恵でした。小規模の葬儀が多くなった現在も廻り焼香の風習は生きており、参列者は焼香を終えたら帰るのが一般的です。返礼品として品物でなく3,000円ほどの商品券を用意する人が多いようです。




■46-18 長野県の葬儀のしきたりと風習

 長野県では、地域によって葬儀などの際に助け合う「隣組」のつながりが強く、通夜や葬儀・告別式では率先して受け付けや会計を担当します。手伝いのお礼として、通夜の後、軽い食事や酒を出す「通夜振舞い」や葬儀後の食事を接待することがあります。また、通夜の際、故人に親しい参列者が紅白の水引をつけた「お見舞い」を出すことがあります。これには、入院中お見舞いに行けなかったことを詫びる気持ちが込められており、通夜の席で遅れてしまった見舞金を渡していることになります。大町市周辺の池田町、松川村では、葬儀のときに供花や供物をあげてくれた人には、お供え返しとして「直会(精進落としのこと)」の席でビール券などを配るようです。




■46-19 石川県の葬儀のしきたりと風習

 浄土真宗の熱心な信徒が多い石川県では、お寺との深いつながりから火葬後の遺骨を2つの骨つぼに入れ、一つを菩提寺に納めることが多いようです。葬儀・告別式の後に火葬する「後火葬」がほとんどで、還骨法要までを当日に営みます。また、初七日法要よりも一周忌の法要を盛大に行う傾向があります。そのため、葬儀の際の祭壇も他府県に比べて荘厳になる傾向があります。葬儀に参列した人が帰宅すると玄関先で塩をかけお浄めを行いますが、石川県では一部の地域で塩と一緒にぬかをかけます。




■46-20 富山県の葬儀のしきたりと風習

 富山県では、呉羽山を挟んだ東西の地域をそれぞれ「呉東」、「呉西」と呼びます。木の棒に細長く切った紙を挟み、祭壇に飾る「四華花(しかばな、死華花とも書く)」は富山県の葬儀には不可欠で、紙の色は呉東では白と黒、呉西では白と緑が使われます。出棺の際、柩に白いさらしを結び遺族が引っぱる風習が残る地域があります。主に曹洞宗や臨済宗の葬儀で行われるもので、故人を正しいところへ導く「善の綱」と呼ばれます。最近は簡略化され、白い布を手に持つこともあります。富山県では告別式に一般の焼香客が多く参列し、葬儀終了まで同席することも珍しくありません。また、近年は喪主を務める世代が県外に出ていることも多く、葬儀のしきたりや風習は徐々に薄れつつあるようです。




■46-21 静岡県の葬儀のしきたりと風習

 出棺の際、玄関を通らず他の場所から棺を運びだす地域は多くありますが、静岡県の沼津市では、青竹で仮門を作ってふたりで持ち、棺にここをくぐらせます。御前崎市周辺では精進落としの際、親族に料理とは別に「淋し」と呼ばれる黒豆の入ったおこわを振る舞う習慣があります。牧之原市周辺では、通夜振る舞いと一緒にあめをつけて一口大に丸めた餅を出します。三島市・沼津市・熱海市・伊豆市などでは、通夜の焼香客にジュースやビールの詰め合わせを渡す習慣があるようです。このように、地域によって用意するものが異なるようです。浜松市近辺では、告別式の最中に「別れの杯」の儀式が行われます。おちょこに少量のお酒を注ぎ、参列者が順番に口をつけます。




■46-22 岐阜県の葬儀のしきたりと風習

 日本では、99%が火葬を行っていますが、岐阜県の郡部には、今なお「土葬」を行う地域があります。また、美濃の一部では、廃仏棄釈(仏教寺院・仏像・経巻を破毀し、僧尼など出家者や寺院が受けていた特権を廃すること)の影響から、神葬が多く行われています。山側の地域では、「総斎」といって、手伝いにきた近隣の人の人数分の軽食を葬儀の前に用意します。この時、赤飯や砂糖をつけることもあります。ほかにも、「葬式組」「班」など、葬式のときに助け合う組織のつながりが盛んな地域では、受付けや会計を手伝った人たちに精進落としとして「勘定酒」と呼ばれる食事を接待します。香典返しは、酒や茶などを用意するのが一般的ですが、例外的にほとんどの家が「ビール券」を出すという地域もあるようです。




■46-23 愛知県の葬儀のしきたりと風習

 愛知県では、通夜の際、近親者が香典と一緒に「淋し見舞い」を遺族に渡す風習があります。南知多町周辺では、自宅に遺体を安置し、僧侶が読経するまでは「生きているように」扱う風習があります。また、自宅から出棺の際、「もう帰ってはこない」という意味を込めてわらを燃やすこともあります。西三河地域では、大小2つの白木の位牌を準備し、大きい方を遺体の胸元に入れて一緒に火葬します。法要は小さい位牌で行い、これは忌み明けまで使われます。県内中心部では前火葬と後火葬が混在しますが、山間部や海沿いの地域では前火葬が多く、南知多町では自宅から出棺し、骨葬で通夜・告別式を行うことが多いようです。さまざまなしきたりや風習が多い愛知県ですが、都市部を中心にここ20年ほどの間で簡略化される傾向にあります。




■46-24 三重県の葬儀のしきたりと風習

 三重県では、通夜の翌朝に火葬を行う「前火葬」、葬儀・告別式の後に火葬を行う「後火葬」、さらに通夜の前に火葬を行うなどさまざまなケースが混在します。自宅葬が7割を超える三重県では、「組」と呼ばれる近隣組織が、通夜や葬儀を取り仕切ります。組にとってお葬式の手伝いは大変重要で、仕事を休んで葬儀の手伝いを優先すべきだと考えられている地域もあります。また、名張市には、近隣や組の人たちが1〜3千円程度のお香典を持ち寄って霊前に供える、「村香典」と呼ばれる風習があり、通夜のことを「夜伽」と呼びます。「夜伽」とはもともと、一晩中寝ないで傍にいるという意味です。名張市などでは、葬儀の際に助け合う組や近隣の人たちが一定額を持ち寄り香典とする「村香典」の風習が今なお残っています。




■46-25 京都府の葬儀のしきたりと風習

 葬儀用の供花には樒だけを使います。お葬式には「供花」と呼ばれる花を故人に供えます。この供花は、生花や造花、花束、花輪、籠花とさまざまですが、京都市以南の地域では、供花に樒だけを用います。現在でも樒をお葬式に用いるのには、故人に悪霊が近寄ってこないための魔除けの意味合いがあるようです。また、京都の北部地域では、供花に花輪を用います。出棺の際、茶碗を割ったり和紙を燃やしたりするもあるようです。


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