葬儀相談コラム


第19回 お墓物語パート3(樹木葬ツアー)


■19-1 樹木葬はどうかしら?

お墓物語 お墓探しを始めた田中さん夫婦、永代供養墓と納骨堂を見に行き、二郎さんは疲れ果てて帰ってきましたが、和子さんは元気に話しかけています。「今度はね、樹木葬の墓地に行ってみたいの」。花が大好きな和子さんは、花の下で眠る、と評判の樹木葬に興味があったのです。

樹木葬、という言葉を初めて聞いた二郎さん、「樹木葬、なんだそれ?」と尋ねます。和子さんもよくはわからないのですが、お骨をそのまま埋めるのでいずれ土に還る、周りには花や木が植えられている、自然の中で眠ることができる、というイメージを持っていました。そういえば一昨年、東京都立で初めての樹林墓地がニュースで騒がれていたことを二郎さんも思い出しました。今日見てきたお墓は、いかにも都会的なお墓で、九州の自然が残る土地に育った二郎さんにはロッカーのような納骨堂に少し違和感があり、樹木葬に興味がわいてきました。


【今回のキーワード】


樹木葬:樹木葬とは、墓石の代わりに樹を植えて墓標にしたお墓です。日本最初の樹木葬は、1999年に岩手県一関市の知勝院が作った墓地と言われています。樹木葬には、自然の里山を生かすように作られた「里山型」や1本の樹の下の個別区画や共同区画に遺骨を埋める「シンボルツリー型」、木や花が植えられた一定の区画の中に遺骨を埋める「公園型」など色々な形があります。
(「土に還る、自然の中で眠る、経費が掛からない、跡継ぎが要らない」などの理由で最近特に注目を集めています。




■19-2 樹木葬ツアーに参加


ある日和子さんは友達から「樹木葬を巡るツアーがあるのよ、一緒に行こう」と誘われました。なんと、東京近郊の樹木葬墓地を3か所回るツアーです。料金はかかりますが、ちょうど良い機会なので一緒に行くことにしました。

バスツアーには夫婦連れや友達同士、一人参加の人など40名近く参加していました。「家族がいないから元気なうちに」と真剣にお墓を探している人もいましたが、「今後の勉強のため」「そろそろお墓を考えないといけない」「親の遺骨があるのだけれど」「終活に興味があって」など参加理由はいろいろのようです。


【今回のキーワード】


お墓のセミナー&ツアー:『終活セミナー』などが葬儀社で行われることは、もはや一般的になったように、お墓のセミナーも各墓石業者などで行われています。ただ、お墓の場合は立地場所、雰囲気、形、大きさなど実際に現地に行かないとわからないことが多いのです。そこで最近では、墓石業者だけでなく新聞社や旅行社などが有料・無料のツアーを企画しています。ツアーでは車内でお墓や終活のセミナーが行われることもあります。




■19-3 都立で初めての樹木葬


先ず行ったのは、東京都立小平霊園。ここには「樹林墓地」と「樹木墓地」がありました。平成24年に完成した「樹林墓地」はコブシやネムノキのような落葉樹林の下に、共同埋蔵施設(コンクリート製の土管のようなもの)を27基設けて遺骨を埋蔵します。最終的には10,700体の遺骨を埋蔵する予定だそうです。一方「樹木墓地」はシンボルとなる樹木の周辺に遺骨を個別に埋蔵する墓地で、平成26年募集開始の予定ということです。小平霊園自体は65万uもの広大な敷地を持つ公園型霊園ですが、この樹林墓地は入口に近い一角843uの敷地で、考えていたよりも狭いな、と感じました。テニスコート3つ分より少し大きいスペースに、1万人もの遺骨を埋蔵、と考えると、なんだかぎっしり詰め込まれるような気がしました。

平成25年度の使用料は、遺骨のまま埋蔵だと1体134,000円、紛骨にして埋蔵すると1体44,000円でした。


【今回のキーワード】


東京都立霊園:東京都が都民のために設けた霊園。青山霊園、谷中霊園、雑司ヶ谷霊園、染井霊園、八王子霊園、多磨霊園、小平霊園、八柱霊園(千葉県松戸市)の8か所です。

都立霊園を使用するには申込をする人の居住要件があり、個別埋蔵施設では東京に5年以上、合葬埋蔵施設では3年以上住んでいることが必要です。その他、埋蔵する遺骨を持っていること(生前申込を除く)、遺骨に対して祭祀の主宰者であること、などの条件があります。都立霊園の申込期間は例年7月1日から16日。募集要項は東京都広報6月号に掲載され、インターネットでも見ることができます。

この他の地域の公営墓地もそれぞれ条件がありますので、公営墓地に埋蔵したいときには、自分がその条件に合致しているかどうかをまず調べます。




■19-4 花咲く霊園の樹木葬


次に行ったのは「花咲く霊園」が売りの、都心から20分ほどの私鉄沿線駅近くの霊園です。この霊園には、個別のお墓(1区画約350万円〜すでに完売)、永代供養墓、樹木葬がありました。

この霊園の樹木葬は、遺骨を粉状にして直径15p、深さ25p位の金属製の缶に入れて埋蔵し、手前には名前を書いたプレートをおきます。缶に入れるので土に還ることはなく、メリットとしては改葬もできる、とのことです。永代供養料、プレート代、全て込みで遺骨1体約70万円、後々の管理料は不要、とのことでした。今販売しているエリアでは、永遠にここに眠ることができるそうです。

「樹木葬=土に還る」と、思っていた和子さんは、こんな方式もあるのか、と驚きました。確かに花がいっぱい咲けば公園のようですが、都心に近いだけにスペースはあまりに狭く、自分が抱いていた樹木葬のイメージと違うような気がしました。


【今回のキーワード】


遺骨の埋蔵方法:樹木葬の遺骨埋蔵方法も色々あります。

合葬式:一つの大きな埋蔵施設に多くの遺骨を一緒にして埋蔵する方式です。

個別式:割り当てられた区画に穴を掘り遺骨を埋蔵します。区画は、一人1区画割り当てられる所もあれば、広い区画を数人で使うタイプもあります。

遺骨の埋蔵の方法は、穴の中にそのまま埋蔵、布袋に入れて埋蔵、骨壺に入れて埋蔵など、霊園によって異なります。

骨壺も陶器製、金属製、木製など霊園ごとに決められています。




■19-5 東京郊外の霊園で


最後に向かったのは、東京郊外にある樹木葬墓地です。「電車とバスで都心から約1時間チョットで来られますよ」、との説明でしたが、東京都は思えないほどのどかな雰囲気です。

ここは寺院内にある里山型の樹木葬墓地で、周囲の山林と一体化するように作られていました。この霊園の1区画は60p×80pあり、そこに一人または夫婦二人分の遺骨を木製の骨壺に入れて埋蔵します。
骨壺は、土中のバクテリアが生息する深さを考えて作られ、年月をかけて里山の大地に還るように設計されていました。ここでも遺骨は粉状にして埋蔵されるそうです。この墓地の費用は、1区画を1人で利用する場合は約67万円、2人で利用する場合は約90万円でした。この墓地も民営墓地ですが、お寺の住職さんが敷地内に住んでおられるのも、なんだか安心感があります。

3か所の樹木葬を見終わって、ホッと一息。一口に「樹木葬」と言っても色々あることがわかり、「やっぱり実際に見てみないとわからないわね、参加して良かった」と話し合いながら帰途についた二人でした。


【今回のキーワード】


民営墓地:墓地を設置(経営)できるのは地方自治体、公益法人、宗教法人と法律で定められていますので、民営企業は経営できません。しかし、この霊園のように寺院の境内にあっても、宗教宗派を問わずに受け入れる霊園を「民営墓地」と分類しています。

ただし、民営墓地と謳っていても、過去の宗教・宗派は問わないが、埋葬後はその寺の住職が勤行を務める決まりになっている所もあります。自分の家の宗教・宗派と違うときには、事前に確認しておきます。

また、設置経営は宗教法人ですが、墓石業者が管理運営販売を請け負っている民営墓地もたくさんあります。


執筆:河原正子(CFP認定者)
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