●地方出身で東京に住んでいる人などを対象に、生まれ故郷で葬儀や火葬を行うことをPRする例が増え始めています。このような葬儀・火葬のあり方を故郷葬と呼んでいます。 ●123-1 故郷葬とは? 超高齢社会に突入した日本。2015年の1年間に亡くなった人の数は約130万人、2030年には160万人を突破すると言われています。亡くなる人が増えると、葬儀や火葬の件数が増えるのは言うまでもありません。とりわけ人口が集中する東京、神奈川、埼玉、千葉などの首都圏では、火葬場施設の不足が課題になっています。現在も、火葬場の日時、場所によっては、1週間から10日程度待たされるのは当たり前です。 これまで、友を引くとして葬式が避けられた友引の日には、葬儀や火葬は行われませんでした。ところが、火葬場施設の不足から、最近では友引の日や正月三が日などにも葬儀や火葬が行われるようになっています。 斎場や火葬場の新規建設が急務とはいうものの、地域住民の反対などもあり、なかなか進まないのが現状です。 このような中、地方出身で東京に住んでいる人などを対象に、生まれ故郷で葬儀や火葬を行うことをPRする例が増え始めています。このような葬儀・火葬のあり方を故郷葬と呼んでいます。 ●123-2 火葬場への申込み 亡くなるときは故郷で、故郷の土に帰りたいなど、生まれ育った土地以外に移り住んでいた人が、亡くなるときは故郷を選ぶという思いは誰しもが思い浮かべるもの。 これまでも、火葬までを行ったあと、生まれ育った土地で葬儀を行う例は多くありました。葬儀を行った後、納骨もその土地のお墓に入る、というのが一般的でした。 家族葬や直葬がポピュラーになったことも故郷での葬儀がやりやすくなった原因の一つでしょう。インターネット等で全国展開する葬儀社が増え、地域に拠らない自由な葬儀のあり方が広がってきたことも故郷葬の背景にはあります。 火葬場への申込みは、直接行うことができます。通常は、地域住民向けの優先枠とそれ以外の人向けの一般枠があり、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末などで利用してインターネットで予約申込みができる火葬場もあります。 ●123-3 ご遺体の搬送 遠隔地の火葬場までご遺体を運ぶ場合、どうしても自家用車を利用したいという時があります。ご遺体を自家用車で運ぶことに法律上の規制はありません。ただし、寝台車や霊柩車ではありませんので、いくつか注意が必要です。 まず、ご遺族が付き添うということです。もし、警察等に停められて質問を受けた場合に、ご遺体の搬送について説明をしなければなりません。死亡診断書と故人の免許証など故人を証明する書類を持参したご家族が乗車し、故郷葬の旨を伝える必要があります。 また、ご遺体は、防水シーツに包んで納棺した状態で搬送します。したがって、ワンボックスタイプまたはワゴンタイプの自動車で棺を寝かせて搬送するのがよいでしょう。 自家用車といってもレンタカーだと断られることがありますので気をつけてください。 故郷の火葬場でどのような形態で受け付けてもらえるかも確認しておきましょう。火葬場に到着すると、棺はいったん霊安室に置かれます。納棺が条件となるケースがあるので気をつけてください。 なお、ご遺体の搬送を葬儀業者に依頼すると、搬送料、高速料金、人件費、防水シーツなどを含めて、5万円から20万円程度の費用がかかります。棺の値段はそれとは別になります。 葬儀を含む全体の費用や、不慣れな搬送の手間を考えて検討したいところです。 |