葬儀相談コラム


第112回 読経の値段



読経の値段
  ●112-1 宗教行為は商品!?

 インターネットで注文して僧侶を手配する「お坊さん便」が物議を醸しています。日本の伝統仏教界の連合組織である全日本仏教会は、2016年3月4日、「Amazonのお坊さん便 僧侶手配サービス 販売中止のお願い文書提出」というニュースリリースを行いました。

それによると、全日本仏教会は「僧侶の宗教行為を定額の商品として販売することに大いなる疑問を感じる」とし、アマゾンに対し「お坊さん便」の販売中止を求めています。全日本仏教会は「お布施の定額表示に反対」するとともに、加えて「戒名」「法名」の商品化も否定しています。なぜなら「定額化は本来の宗教性を損なうから」。「本来の宗教性」とは、「お布施によって寺院を維持し、教えを広め、仏法を相続すること」といいます。僧侶の宗教行為を定額化・商品化してもよいのか、それともだめなのか。決着はついていません。

 アマゾンの「お坊さん便」サービスは、現在も利用できます。販売は中止していません(2016年3月31日現在)。サービス提供を行う「お坊さん.jp」によると、葬儀・火葬式・初七日の読経料をお布施料金と定め、60,000円と価格設定しています(一日葬、お車代が別途5,000円必要)。

そのほか、お通夜・葬儀の場合は100,000円、このほか、戒名(法名・法号)も価格を決めています。浄土宗、真言宗、天台宗、臨済宗、曹洞宗、浄土真宗、日蓮宗の各宗で、20,000円から150,000円の価格を揃えています。本サービスは、北は北海道から、南は熊本まで利用可能です。宮崎県、鹿児島県、沖縄県の3県だけは本サービスは受けられません。  ちなみに、アマゾンの「お坊さん便」には、サービス直後から問い合わせが多く寄せられているそうです。とりわけ多かったのは、意外にも僧侶からの登録を希望する電話だったそうです。

●112-2 お布施の値段
 一般に、寺院へのお布施は、枕経料、通夜読経料、当日読経料、初七日読経料、戒名(法名)料、御膳料、御車料などがあります。戒名料にもよりますが、総額20万円から100万円程度かかります。お布施は功徳を積む行為と解釈されるため、本来は価格表示に馴染まない宗教行為というのが伝統的な考え方です。

 一口にお布施といっても、通夜、葬儀・告別式、法事法要、納骨、改葬、お盆、お彼岸など、その都度別のお布施になります。宗教行為と解するわけですから、ありとあらゆる宗教行為の際に、お布施があるというわけです。ここまでかかるとなると、いったいどれだけお金を包めばよいのか、ずいぶん負担が重くなるなと考えたくなるのも、無理もありません。宗教意識が薄れてきている今日、宗教行為に対する謝礼が定額化するのは、時代の流れと言えるかもしれません。

●112-3 お布施のトラブル
 無宗教葬を行う例が増えています。所属する宗教宗派にこだわらない葬儀・葬祭も珍しくはありません。ただし、菩提寺がある場合は、菩提寺とのトラブルが起きないよう注意する必要があります。

 例えば、菩提寺とは異なる宗派で葬儀をあげ、戒名(法名)までもらってしまったケースでは、納骨の際に菩提寺から拒否され、新たな戒名を求められることがあります。菩提寺との御縁を切って、公営墓地などに埋葬できればよいのですが、もし菩提寺の墓地に納骨するとなると、戒名料は2倍かかってしまうことになります。自分が属している菩提時との関係については、事前にしっかりと調べておくことが肝心です。

 戒名を巡るトラブルはほかにもあります。戒名はお金を出せば必ず位の高い戒名をいただけるわけではありません。社会や菩提寺への貢献度などをもとに菩提寺の住職に認められなければなりません。

 お布施の金額について、多すぎたり少なすぎたり、相場観が分からずに、結果的に菩提寺と揉めるケースがあります。宗教団体側では、お布施の値段は定額ではないというのが建前ですが、実際はそれとなく金額を確かめながら納めています。同じ菩提寺の檀家の方に聞いてみるとか、葬儀業者など仏事に詳しい専門家に聞いてみるなどして、菩提寺とトラブルが起きないようにお布施に気を使うことをおすすめします。
 





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