葬儀相談コラム
第11回 お墓物語パート2
■11-1 和子さんの意見
家に帰った二郎さんは、さっそく妻の和子さん(仮名)にお墓のことを話しました。
実は和子さん、今年の年賀状で同級生の京子さんが突然亡くなったことを知り、もし私が死んだらどこに埋葬されるのかしら?
と急に不安になったので、色々とお墓のことを調べ始めていました。
お墓には、九州の田中家のお墓のように承継者(お墓の後継ぎ)が必要なお墓のほかに、霊園や寺院が法要や管理をする承継者の要らないお墓があることがわかりました。
娘の瑞枝さんの夫は長男、しかも海外転勤のある会社に勤めています。和子さんは、「瑞枝さんにお墓のことで迷惑をかけたくない」と考えて、跡継ぎの要らないお墓に入りたいと思うようになりました。
二郎さんが真剣にお墓のことを考えていることを知った和子さんは、二人で跡継ぎのいらないお墓の見学に行くことにしました。
【今回のキーワード】
後継ぎの要らないお墓:後々の管理を霊園がするお墓。納骨堂、永代供養墓、合葬墓(集合墓、合祀墓)、共同墓、樹木葬、骨仏などがあります。
■11-2 永代供養墓、合葬墓を見学
まず行ったのは、都内にある永代供養墓です。寺院の境内にありますが、寺院墓ではなく宗教宗派を問わない民営霊園でした。石造りの碑があり、遺骨は小さな専用骨壺に入れて永代に保管され、その骨壺に入らない遺骨は大分本院の納骨処に合葬されるとのことです。碑の周りには名前を記したプレートずらりと並び、あふれんばかりのお花が供えられていました。宗教宗派は問いませんが、合同供養の法要はその寺の宗旨で執り行うとのことです。初めて永代供養墓を見た二郎さんは、こんなにたくさんの人と一緒に入るお墓があることに驚きました。交通の便がいいので、娘の瑞枝がどこに住んでいても墓参に来やすいことが気に入りました。
次に行ったのは、自宅から3駅先の民営霊園でした。花であふれる公園のような墓地をめざしているだけあって、とても明るい雰囲気です。ここの集合墓は一つのモニュメントの前方にそれぞれの墓所があります。種類は4種類あり、最初から合葬されるタイプ、一人に1つのカロート(遺骨を納める石室)と1枚のプレートがある個人墓、夫婦で1つのカロートと1枚のプレートの夫婦墓、家族4人までは入れる家族墓がありました。最初から合葬されるタイプ以外は、亡くなってから33年間個別のカロートに安置されたあと、園内の総墓で合葬されます。ここも初期費用だけで後々の管理料は不要です。明るい雰囲気が気に入りました。
【今回のキーワード】
永代供養墓と合葬墓の違い:どちらも霊園等が永代にわたり管理するお墓。特定の宗教宗派で供養を行うお墓を永代供養墓いい、供養はない、もしくは宗教色を出さない墓を合葬墓(集合墓、合祀墓)という。形はモニュメント、霊廟、石碑、仏像などさまざまであり、遺骨は地下や別の建物内に安置する。
■11-3 合葬される時期が違う
個別のお墓では、墓石の下などに遺骨を納める室(カロート)があり、遺骨は骨壺や骨袋に入れて葬りますが(注1)、合葬では多くの人の遺骨を骨壺から出して同じ墓に葬ります。
霊園の話を聞いていた二郎さん、合葬とは何か、合葬墓でも個別に葬られる期間もあることを知りました。
帰宅後調べると、同じ永代供養墓や合葬墓でも、それぞれの霊園や墓によって合葬される時期が違うようです。
*最初から合葬
*最初は個別の骨壺で安置し、一定期間後に合葬
*永代的に個別の骨壺で安置
今回のキーワード
合葬(合祀):一つのお墓に2体以上の遺骨を一緒にして埋蔵すること。他人の遺骨と混ざり合うので、合葬した場合はもう故人の遺骨だけを取り出すことはできず、後になって改葬(お墓の引っ越し)することはできません。
(注1)地域により遺骨をそのまま葬ることもあります。
■11-4 納骨堂を見学
しばらくして、今度は納骨堂の見学に行きました。納骨堂といっても色々な種類があるそうです。この納骨堂は地下・地上合わせて5階建ての建物の中にある仏壇式納骨堂で、1基のスペースは高さ220cm、幅60cm、奥行き45cmです。上下2段に分かれ、上の段には仏壇が置かれ、下の段には遺骨が骨壺ごと18体も安置できるようになっています。
こんなお墓もあるのかと驚きましたが、次の所はもっとビックリ、『搬送式堂内墓』と書いてありました。受付で手続きをしたあと、案内された参拝室に行くと、自分の家のお墓(納骨厨子)が現れてお参りするシステムです。その厨子のなかには骨壺が3体入るとのこと。仕組みを聞いて思わずタワーパーキングを思い出しました。自分の車を入れた番号を押すと機械が回って自分の車が出てくるタイプの駐車場です。この納骨堂は年間管理費が必要ですが、無縁になっても永代供養していただける、とのことでした。
【今回のキーワード】
納骨堂:遺骨を一時的に預かる埋蔵施設として納骨堂は昔からありましたが、今はお墓の代わりとして遺骨を永代的に収蔵する施設が多くなりました。形態は仏壇式、ロッカー式、棚式、自動搬送式などがあります。最初は個別の骨壺で安置しますが、合葬するまでの期間や年間管理料の有無は霊園や契約の仕方によって様々です。
■11-5 永代なのに期限があるの?
昔のお墓しかイメージしていなかった二郎さんは、時代の進歩にただ驚いていました。
このようなお墓がいいのかな? と和子さんを見ると、小さな声で一言「ここはね、テレビで見て興味があったからチョット見たかっただけ」と。
今日の最後のお墓は、帰宅途中の駅から5分ほど歩いたところにある納骨堂。ここは永代供養墓のような石碑の前でお参りをします。納骨堂は地下にあり、ちょうどのロッカーを並べたような感じでした。一つのロッカーに1体の遺骨を納め、三十三回忌後に合葬されるとのこと。もちろんその時に遺族が生きていたら延長はできるそうです。
二郎さんは話を聞いても理解できたような、できなかったような、疲れ果てて家に帰ってきました。家に戻ってホッと一息ついていたら、ふと「永代供養と言っても、三十三回忌までなのかな?」と疑問がわいてきました。隣で和子さんが「今度はね…」と話してかけています。
まだまだ田中家のお墓探しは続きそうです。
【今回のキーワード】
永代は永久ではない:お墓の場合、永代は永久ではありません。永代使用料は、「承継者がいる限り(管理料を払ってくれる限り)において永代にわたり墓地を使用する権利の代金」です。後々の管理の要らない「永代供養墓」の場合は個別に供養してもらえる期間は霊園や契約方法で決まっています。納骨堂などの場合、三十三回忌の後で、個別の骨壺から出して合葬するお墓が多いです。それは、日本では古くから死後33年か50年経てば死者の個性はなくなり祖先になると考えられてきたからです。
執筆:河原正子(CFP認定者)
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