葬儀相談コラム


第103回 遺品整理と相続放棄



遺品整理 ■103-1 形見分けと相続財産
 亡くなった人が生前に愛用していた遺品を整理して、遺品を遺族や縁故者に分け与えることを形見分けと言います。腕時計やネックレス、衣服、書籍、家具、文具など、故人の持ち物が形見分けの対象となります。一般的に形見分けは遺産分割とはならず、遺品は税法上相続財産となりません。したがって、相続税は課税されません。しかし、形見分けできる遺品か、それとも相続税の課税対象となる相続財産かの境目は曖昧です。例えば、故人が愛用していた腕時計やネックレスといった資産価値のある遺品は、その時価によっては相続財産とみなされてしまうケースがあります。
 形見分けの遺品には、資産価値がまったくないとは言えないものも数多いでしょう。それらは厳密には相続財産です。ただし、複数の相続人の間で許容される程度のモノであり、相続税の算出に影響を与えない程度の少額のモノであれば、形見分けの遺品として、相続財産の対象ではないと考えられます。





■103-2 形見分けと相続放棄の難しい関係
 ところが、わずかな資産価値しかない形見分けに関して、難しい問題が起こる場合もあります。それは相続人が相続財産を一切受け継がない「相続放棄」を選択した場合です。
 相続とは、故人の権利や義務のすべてを相続人が承継することを言います。すべての権利義務ですから、通常の相続では、プラスの財産もマイナスの財産も引き受けることになります。
 一方、プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引き継ぐことや、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないという方法もあります。なにも引き継がないことを「相続放棄」と言います。
 さて、相続放棄を選択したら、形見分けももらえないのでしょうか。相続放棄の手続きを行っても、実際は遺産を引き継いでいたり勝手に処分したりすると、相続放棄が取り消され、通常の相続の扱いとなってしまうことがあります。つまり、形見分けの価値によっては、相続放棄が認められなくなり、場合によってはマイナスの財産も引き継がなければならなくなることがあるのです。
 宝飾品、高価な絵画や美術品、敷物など、明らかに形見分けの遺品の価値を超えるモノを相続人が引き継ぐ場合や、すべての形見分けの遺品を特定の相続人だけが引き継ぐ場合は、相続放棄の取り消しだけでなく、相続財産の隠匿を指摘されることがありますので、注意が必要です。また、車体にほとんど価値が残っていない中古車の所有者の名義を書き換えるなどの手続きも、形見分けと同様に注意が必要です。
 こうした問題を解決するためには、形見分けの実務に詳しい遺品整理業者や葬儀業者に前もって相談しておくことをおすすめします。





■103-3 遺品整理の特殊事情
 相続の実際の場面では、のんびり遺品整理をできない特殊なケースもあります。例えば、賃貸住宅に住まいの独居老人が亡くなってしまう孤独死のケースです。亡くなってから時間が経過している場合は、遺品整理を急いで行う必要がありますし、遺品整理以外でもゴミの後始末や賃貸住居の原状回復(特殊清掃)も行わなければなりません。ご遺体の処理や住居の原状回復だけでなく、家賃や公共料金などの支払を滞納していた場合はその清算も遺族が行わなければなりません。そうした特殊事情に加えて、遺族が遠隔地にいるケースでは、遺品整理に何度も足を運ぶことができないといった事情も重なります。遺族はそれらすべての処理について迅速に行わなければなりませんが、遺品整理業者はそれら一切を業として引き受けてくれます。心配な方は、前もっていざというときに頼みにする遺品整理業者を探しておいたり、葬儀業者に手筈を整えておいたりすることをおすすめします。
 特殊事情の遺品整理においては相続放棄の問題があります。急いで処置しなければならない事情があるときに、相続放棄を行う者が財産の処分を行ってよいのかという問題です。こうした場合も詳しい遺品整理業者に訊いてみるとよいでしょう。





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