葬儀相談コラム
第100回 祭祀財産と相続
■100-1 祭祀財産とは?
相続の法律では、亡くなった人のことを「被相続人」、亡くなった人から財産を受け継ぐ人のことを「相続人」と呼びます。そして、神や祖先を祀るための財産については、相続の対象にはならないとされています。この神や祖先を祀るための財産を祭祀財産(さいしざいさん)と言います。
祭祀財産とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。法律では「系譜」「祭具」「墳墓」を挙げています。そして、それらを所有する権利は、相続のルールにかかわらず、「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」か、「亡くなった人が生前に指定した祖先の祭祀を主宰すべき者」が受け継ぐ、と決められています。
一般に、相続が起こると、亡くなった人の財産は相続する人に受け継がれます。この時の財産には土地や建物やお金などのプラスの財産だけでなく、借入れなどのマイナスの財産も含まれます。これらの財産を相続財産と呼びます。この相続財産に祭祀財産は含まれない、ということが決められているのです。
■100-2 祭祀財産の例
祭祀財産となる「系譜」「祭具」「墳墓」とは何のことでしょうか。次に紹介しましょう。
祭祀財産
内容
祭祀財産
先祖代々の血縁関係のつながりについて書き表した図や記録のこと。古くは、掛け軸や巻物として残されている家系図など。
祭具
祭祀に用いられる器具の総称で、位牌や仏壇、神棚など、祭祀に直接供するために欠くことのできないもの。
墳墓
遺体や遺骨を葬ってある設備のこと。墓碑・棺・霊屋のほか、敷地である墓地も含まれる。
祭祀財産とは、要するに、家系図、仏具、お墓のことです。これらの財産は、相続財産ではありませんので相続税の対象とはなりません。さらに、祭祀財産は祭祀をとり行う人が受け継いでよいとされています。相続財産の承継が原則として血の繋がった相続人となるのに対して、祭祀財産は誰でもよいということになります。
■100-3 祭祀財産が相続でもめる原因に!?
相続の際に親族間でもめるというのが相続争い。相続という言葉をもじって「争族」と言われることもあります。そして、相続争いの原因は、必ずしも財産が多いということだけではありません。財産が少なくても、相続人の間でどのような割合で引き継ぐかでもめるケースが多いのです。この相続争いに祭祀財産が関わることも少なくありません。
「土地や建物はお兄さんが引き継ぐのだから、仏壇やお墓の面倒もみてください」「遠くに住んでいる弟にはお墓の面倒はみれないのだから同居していた兄の私が祭祀財産を引き継ぐ。ついては弟の財産の取り分は減らします」など、祭祀財産の承継をめぐって話し合いがつかないことも起こりえます。
先にご案内したとおり、祭祀財産は相続財産ではありません。ですから、相続財産を相続人の間でどのように分割したとしても、祭祀財産はそれとは全く別問題です。また、祭祀財産はバラバラに受け継ぐことは可能ですが、仏壇と位牌を別に置くことはないわけですから、実際は特定の誰かが面倒をみることになります。
このように、祭祀財産が相続の時の揉め事の原因にならないようにするには、生前に本人が生前に家族に対して、仏具やお墓の面倒をどのように引き継いでもらいたいかを伝えておくことが肝心です。自分にもしものときの葬儀や供養のやり方に加えて、祭祀財産の引き継ぎについても、エンディングノートに書き残しておくことをおすすめします。
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