葬儀相談コラム


第10回 お墓物語パート1


お墓物語 ■10−1 3人に1人はお墓がない!


「今、お骨を埋葬する墓はありますか?」との質問に、「ない」と答えた人は35.6%(注1)、なんと3人に1人は自分が入るお墓を持っていないのです。あなたには入お墓がありますか?
どのような人が「お墓がない」と答えているのでしょうか?

お墓を持っていない、と答えた田中家の例をみながら、一緒にお墓探しにおつきあいください。

田中二郎さん67歳(仮名)は3人兄弟の二男、九州には先祖代々のお墓があり、父親の死亡後、長男の一郎さんが先祖のお墓を承継しました。二郎さんはすでに結婚しているので、このお墓に入ることはできず、自分たちのお墓を用意しなければいけません。

さて、先祖代々のお墓を継いだ一郎さんですが、お墓を継いだものの東京からお墓に行くには飛行機、電車、バスと乗り継ぐので、多大な費用と時間がかかり、今後どうしたものかと悩んでいました。まだ若いからそのうちにと思っていた一郎さん、ある日突然心筋梗塞で倒れ、手当もむなしくあっという間に亡くなってしまいました。呆然としている妻の文江さんは親戚に言われるままに九州の先祖代々の墓に夫の遺骨を埋葬しましたが、時間が経つにつれ、大好きだったご主人のお墓参りも遠すぎていけず、九州のお墓に埋葬したことを後悔し始めました。もし自分が死んでもあのお墓では誰もお参りに来てくれないのでは?
と思うと無性に寂しくて、とてもあのお墓に入る気にはなりません。

さて、この二人、どのようにして自分のお墓を探していくのでしょうか?


【今回のキーワード】

*お墓の承継者*:従来の個別のお墓は、承継者(お墓の後継ぎ、お墓を守ってくれる人)が必要で、しかも一人だけと決まっている。


(注1):日本消費者協会 第9回「葬儀についてのアンケート調査」より



■10−2 墓地は買えません


今までは「お墓を買うなら従来の個別のお墓が欲しいけれど、伊藤がこの前建てたお墓は全部で350万円もしたらしいしなぁ、そんな金ないよな」と漠然と考えていました。この長寿社会、死ぬなんてまだまだ先、と思っていた田中二郎さん(67歳)ですが、お兄さんの死をきっかけにお墓のことが気になりだしました。

そんなある日、「墓石完成セットゆとり墓所 77万円より」のチラシを見つけました。しかも家から車で20分、花が咲いていて明るそうな霊園です。いいのがあった、とチラシに書いてあった通り(注2)、チラシを片手に早速見学に行きました。

早速案内してもらったのは、見たこともないようなモダンなお墓、しかも「〇〇家先祖代々」や「南無阿弥陀仏」ではなく「やすらぎ」や「ありがとう」などの文字や絵が描かれています。色も黒っぽいもの、ピンク系のものなどさまざまです。「へぇ、お墓も進化したものだな」と思いましたが、九州の大きなお墓を見慣れていた二郎さんにはなんとも小さく見えます。隣で墓石業者が一生懸命説明をしていますが、なんだかよくわかりません。そのうちに「永代使用料」という言葉が頻繁に出てくることに気が付きました。「永代使用料、なにそれ?
67万円で買えるんじゃないの?」

訳のわからない二郎さんは、事務所に戻り詳しい説明をしてもらい、お墓を建てるには『永代使用料』と『墓石及びその建立にかかる費用』が必要だということ、チラシに書いてあった67万円はお墓の建立費用だけ、しかも一番安いタイプなので案内してもらった墓石はかなり高いということがわかりました。

確かによく見ると小さい字で『永代使用料・年間管理料花立て・香炉別途』と書いていました。


【今回のキーワード】

*永代使用料*:一般的に「お墓を買う」と言いますが、墓地は買うことはできず、買えるのは墓地を使用する権利で、その権利の代金を『永代使用料』と言います。


(注2)民間霊園のチラシには「ご来園の際には、本チラシを必ずご持参ください」という内容の文言が必ず書いてあります。



■10−3 墓地の種類


思っていた以上にお金がかかることがわかった二郎さんは、勧誘を振り切ってアンケートだけ書いてその日は帰宅しました。その後何度も電話がかかってきますが、決心がつかない二郎さんはその強引さにかえってひいてしまっていました。

悩んだ二郎さんは、最近お墓を建てた伊藤さんに相談にのってもらうことにしました。伊藤さんの御父さんは五男で、お墓を持っていませんでした。そのお父さんが亡くなり、長男である伊藤さんはご両親のためにお墓を建てることにしました。

先ず考えたのは公営墓地、なんといっても管理運営が自治体で安心です。しかし伊藤さんの住んでいる市の公営墓地は倍率が高く、落選してしまいました。チラシを見たり、ネットで探したり、いろいろな霊園に見学に行きましたが、なかなか気に入った霊園が見つかりません。そうこうしているうちに、妻の祖父の法事があり相談すると、その墓地内にお墓が建てられることになりました。ただ、困ったことに自分の家の宗派とは違い、しかも葬式の時に伊藤家の宗派の戒名をいただいています。寺院墓地にお墓を建てる、ということはその寺の檀家になるということ。しかし住職から、新仏からその宗派の戒名をいただけばいい、とのお話があり、そもそも宗教にこだわりのなかった伊藤さんはそのお寺にお墓を建てることに決めました。


【今回のキーワード】

墓地の種類は3種類(墓地を設置できるのは、地方自治体、公益法人、宗教法人だけ)

*寺院墓地:寺院の境内などにあり、寺院が檀家のために設けている墓地で、檀家になることが条件

*公営墓地:自治体が管理運営する墓地。宗教・宗派は自由

*民営墓地:公益法人が経営、または宗教法人が経営する墓地の内、宗教宗派を問わない墓地




■10−4 墓石業者を変えられない!


伊藤さんからお墓を建てたいきさつを聞き、とても良心的な良い石材店に出会って満足のいくお墓を建てたことを聞いた二郎さんはひらめきました。あの霊園自体は気に入っているのだから、伊藤にその石材店を紹介してもらって建てよう、と考え、伊藤さんに石材店を紹介してくれるように頼みました。それを聞いた伊藤さんは即座に言いました。「お前はお墓のこと何にもわかっていないんだなぁ。民間霊園にはその霊園内にお墓を建てることができる墓石業者は決まっていて、しかもいったんA石材店に案内してもらったら、その霊園内ではA石材店しかお墓を建てることはできないのだぞ」と。

それを聞いた二郎さんはビックリ! それであんなに大きくこのチラシを持参してください、と書いてあったのか。


【今回のキーワード】

指定石材店制度:民間霊園の多くは石材店が指定されている。また、同じ霊園では、最初に案内してもらった石材店で墓石を購入するのが決まりとなっている。


執筆:河原正子(CFP認定者)
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